化粧品広告で注意すべき表現とは?薬機法における禁止表現や違反事例を解説

化粧品広告の表現を規制する法律

薬機法(旧・薬事法)

化粧品広告を制作する際にまず意識すべき法律が、かつて「薬事法」と呼ばれていた「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、いわゆる「薬機法」です。この法律は、消費者が誤解するような表現で健康や美しさを安易に誘導することを防ぐために、化粧品や医薬部外品、医薬品に対して厳格な広告表現の制限を設けています。

薬機法の規制は主に、「効果・効能の過剰な主張」「安全性の保証」「誤認を招く表現」などが該当します。化粧品は医薬品ではないため、「治す」「改善する」などの医学的な効果を示唆する表現は基本的にNGとされています。

景品表示法

次に重要なのが「景品表示法」です。これは薬機法とは異なり、製品の内容や価格に関する「誤解を招く表示」を取り締まる法律です。化粧品の広告においては、実際の効果よりも著しく優れているように見せかけたり、比較広告で他社を不当に貶めたりすることがこの法律に抵触する可能性があります。

特に「今だけ50%オフ」「日本一売れている」などの文言は、裏付けや調査データがなければ不当表示と見なされるリスクがあるため、慎重な取り扱いが必要です。

特定商取引法

化粧品のオンライン販売が一般的になった現代では、「特定商取引法」も避けては通れない法律です。この法律では、通信販売における返品ポリシーや会社情報の表示、誇大広告の禁止などが定められています。広告ページに販売元の情報が正確に記載されていない、返品・返金のルールが曖昧であるといったケースは、特定商取引法違反につながります。


化粧品広告は誇大広告とならないよう注意が必要

化粧品の広告において最も陥りやすいのが「誇大広告」です。たとえば、「一瞬でシミが消える」「たった1日で10歳若返る」など、誰が見ても飛躍しすぎていると感じる表現はもちろんのこと、曖昧に見える言い回しでも誇大と判断される可能性があります。

特にSNSでの広告やインフルエンサーの発信などでは、こうしたキャッチーなコピーが多用されがちですが、そこにも薬機法の目が光っています。一般のユーザーが発信する内容であっても、企業が関与していれば広告と見なされ、規制の対象になります。


表現規制に違反した場合の罰則

薬機法や景品表示法に違反すると、行政指導や業務停止命令が出されることがありますが、重大な場合には刑事罰にまで発展する可能性があります。たとえば、虚偽の広告を繰り返した結果、製品の回収命令が出たり、罰金・懲役刑を科されたケースも報告されています。

「知らなかった」では済まされない時代において、事業者は常に最新の法律動向に注意し、広告表現を慎重に選ぶ責任があります。


薬機法の具体的な解釈を示す判断基準

医薬品等適正広告基準

広告表現の境界が曖昧な場面では、「医薬品等適正広告基準」が参考になります。これは厚生労働省が発表しているガイドラインで、医薬品や医薬部外品、化粧品の広告について、何が許され、何が禁止されるかを事例とともに解説しています。

この基準に照らし合わせることで、自社の広告表現が違反に該当しないかを事前に確認することが可能です。

化粧品等の適正広告ガイドライン

また、化粧品に特化したガイドラインとして「化粧品等の適正広告ガイドライン」が存在します。これは薬機法の枠組みを踏まえたうえで、化粧品がどのような効能を訴求できるか、どのような表現がアウトになるのかを明確にした実務的な指針です。


薬機法における化粧品の定義

医薬部外品との違い

薬機法では「化粧品」を「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、皮膚もしくは毛髪の状態を整えるためのもので、人体に対する作用が緩やかなもの」と定義しています。一方で「医薬部外品」は、化粧品と比べてもう少し積極的な効果をうたえるカテゴリであり、例えば「フケ・かゆみを防ぐ」や「肌荒れを防ぐ」などの効能が認められています。

この違いを理解しないまま広告を制作すると、本来化粧品では使用できない効能効果をうたってしまい、違法な広告とされるリスクがあります。


化粧品広告で表現できる効能・効果は56種類

化粧品で認められている効能・効果は、厚生労働省により「56項目」と明示されています。これには「肌に潤いを与える」「皮膚を柔らかくする」「毛髪にツヤを与える」などが含まれており、この範囲内であれば広告表現が可能です。

医薬部外品で表現できる効能効果

一方、医薬部外品では「ニキビを防ぐ」「フケ・かゆみを防ぐ」「体臭を抑える」など、やや踏み込んだ表現が可能です。ただし、その効果が認可されている成分や処方に基づいていなければなりません。誤って医薬部外品のような表現を化粧品の広告で使ってしまうと、薬機法違反となるため注意が必要です。


薬機法で禁止されている化粧品の広告表現

効能効果・安全性を保証する表現

たとえば「絶対に肌荒れしない」「100%効果がある」といった表現は、効果の保証と見なされ、明確に禁止されています。化粧品の効果は個人差があるため、どんなに優れた製品でもこのような断定的な表現は認められません。

他社製品の誹謗広告となるような表現

また、「他社の製品は肌に悪い」「あのブランドは刺激が強い」など、競合他社を否定するような表現もNGです。こうした比較広告は、ユーザーの誤認を招くだけでなく、不当競争防止法にも抵触する恐れがあります。

医薬関係者の推薦表現

「皮膚科医も推奨」「薬剤師が開発した」など、医療従事者を思わせる表現も原則NGです。たとえ実際に開発者が医師であっても、広告でその肩書きを前面に出すことで、医薬品と誤認されるリスクがあるため、避けるべきとされています。


薬機法で注意すべき化粧品の広告表現

製造方法に関する表現

「無菌で製造」「医療レベルの清潔環境」などの表現も注意が必要です。消費者に対して製品の安全性が他より高いという印象を与える可能性があり、薬機法で規制される対象になります。

成分・原材料に関する表現

「〇〇エキスがシミに効く」といった成分起因の効果表現も厳しくチェックされます。実際にその成分に科学的な裏付けがあったとしても、それが化粧品としての効能とリンクしていない場合はNGと判断される可能性があります。

体験談

「使って1週間でシミが薄くなった」などの個人の体験談は、事実であっても広告である限り規制の対象です。特に事業者がコントロールして発信している体験談には、薬機法だけでなく景品表示法の規制も及びます。


化粧品広告の違反事例と言い換え表現

たとえば「このクリームでシワが消える」という表現はNGですが、「肌にハリを与える」「乾燥による小ジワを目立たなくする」といった言い換えであれば認められる可能性があります。また、「美白する」という表現もアウトな場合がありますが、「肌のキメを整える」「透明感を与える」など、あくまで肌状態の変化に言及する表現にとどめることが重要です。

違反事例の多くは、効果を過剰に訴求しすぎた結果として生まれています。これらを避けるためには、広告制作者がガイドラインや事例集を熟読し、表現の引き算をする視点を持つことが必要不可欠です。


まとめ

化粧品広告は、美しさを求める人々の期待に応える重要なコミュニケーション手段です。しかしその一方で、過度な表現は法律違反となり、ブランドの信用を損ねるリスクも伴います。薬機法、景品表示法、特定商取引法といった複数の法律の観点から、慎重かつ正確な表現を心がけましょう。

広告制作の現場では、つい目を引くキャッチコピーに偏りがちですが、今こそ「守る広告」が評価される時代。適正な広告表現を徹底しながら、ユーザーとの信頼を積み重ねていくことが、ブランドの持続的成長につながります。

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