化粧品を取り扱う事業者が知るべき薬機法【8つのポイントを解説】

「薬機法」とは何か、今さら聞けない基本

薬機法は、かつての「薬事法」が改正された法律で、正式には「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と呼ばれます。この法律は、医薬品や医療機器はもちろん、化粧品や医薬部外品を含めたあらゆる製品の製造や販売、広告までを対象に、安全性と信頼性を担保するために設けられています。

化粧品のように肌に直接使われる製品は、消費者の体に影響を与える可能性があるため、表現ひとつにも慎重さが求められます。「売れる表現」が、そのまま「使える表現」とは限らない。だからこそ薬機法の知識は、化粧品を扱うすべての事業者にとって必須のリテラシーなのです。

化粧品の「定義」を知ることがすべての起点

薬機法における化粧品とは、人体に緩やかに作用し、美化や清潔、魅力を高める目的で使用されるものと定義されています。つまり、化粧品は「予防や治療」ではなく、「見た目の印象やケア」を目的とする製品です。これは一見当たり前のように思えるかもしれませんが、広告表現を考えるときに非常に重要なポイントになります。

「肌荒れが治る」「シミが消える」といった表現は、医薬品の領域であり、化粧品がうたって良いことではありません。たとえ効果が感じられたとしても、それをそのまま言葉にすることはできないのです。

「広告表現の落とし穴」薬機法が禁じる危険な言葉とは

まず大前提として、薬機法では「広告の印象」が最も重視されます。文字通りの意味ではなく、受け手がその言葉からどう感じ取るかが問われるのです。この視点を忘れると、悪意なく記載した表現が違反となり、行政指導や罰則の対象になることもあります。

なかでもよくある違反例が、効果効能を過度に誇張する言い回しです。「驚きの変化」「劇的改善」「たった1回で実感」などは、使いたくなる気持ちはわかりますが、医薬品的な効能を暗に示してしまい、化粧品の範囲を超えるとみなされるリスクがあります。

さらに、確実性を強調する表現もアウトです。「必ず治る」「100%効く」といった断定的な言い回しは、化粧品の広告では完全にNG。あくまで「感じ方には個人差がある」「健やかな状態へ導く」といった表現で留めなければなりません。

意外なところでは「ビフォーアフター画像」もグレーゾーンです。写真自体は使ってもよい場合がありますが、それが「効果の証拠」であるかのように使われるとアウトになる可能性が高くなります。

絶対に知っておきたい、化粧品の広告表現で守るべき8つのルール

薬機法の中でも、特に広告に関するルールは細かく、しかも曖昧に見えることも多いものです。ですが、繰り返し行政処分の対象になる企業が後を絶たない以上、対策は必須です。以下の8つのルールを軸に、自社の広告が大丈夫かを一度チェックしてみてください。

まず1つ目は、「効果効能をうたわないこと」です。どれだけ顕著な変化が見られても、「治る」「改善される」といった言葉は使えません。2つ目は、「安全性の保証をしないこと」。万人に副作用がないことは保証できませんから、「絶対に安心」「副作用ゼロ」といった断定は避けるべきです。

3つ目に、「最大級の表現を避けること」が挙げられます。「業界No.1」「最高の成分」といった言葉は、明確な第三者データがない限り誇大広告とみなされます。

4つ目は「誤認を招く体験談を使わない」こと。実際に体験したとしても、「治った」と読める表現は避けなければなりません。5つ目は「優位性の主張に注意すること」です。他社との比較によって自社を良く見せる表現も、裏付けがなければNGになります。

6つ目として、「不安を煽る表現」は法律的にも倫理的にもNGです。「このままだと手遅れに…」といった恐怖心をあおる表現は、多くの法律に抵触する可能性があります。

そして7つ目、「推薦行為をしてはいけない」ことも重要です。「医師も推薦」「専門家が選んだ」といった表現は、信頼性を装うことで消費者を誘導する恐れがあるため、原則禁止とされています。

最後の8つ目として、「標ぼう表現の範囲を逸脱しない」こと。化粧品には薬機法で定められた57項目の効能表現が存在し、それを超えたアピールは一切できません。

具体的なNG表現を知っておくことがリスク回避の第一歩

化粧品の広告を作るときに、「これはアウト」とすぐに判断できる目を持っておくことは非常に重要です。たとえば「~が必ず改善します」という表現は、その確実性の強調ゆえに薬機法違反に該当します。

「肌荒れが治ります」も、治療を連想させるため化粧品の表現としてはNGです。「~が消えます」という表現も注意が必要で、症状の根本的な解決を連想させるワードは、化粧品では使えません。

一見すると日常的に使われる言葉ばかりかもしれませんが、広告表現においては「普通の言葉」が違法になることもあるのです。だからこそ、表現の見直しは定期的に行うべき業務の一つといえるでしょう。

まとめ|薬機法を制限ではなく「戦略」として活かす

薬機法は、単に「広告表現を制限するもの」と捉えるのではなく、ブランドとしての信頼性を高めるための「戦略の指針」と考えるべきです。正しいルールを理解し、その中で魅力的な価値をどう伝えるか。この視点を持つことで、化粧品ビジネスの信頼性は飛躍的に高まります。

消費者の目は年々厳しくなり、行政の監視もより強化されています。だからこそ、今後ますます「安心して買える化粧品」を作れる企業だけが生き残っていく時代になっていくのは間違いありません。

薬機法を学ぶことは、未来の売上を守る最良の自己投資です。広告・販促を担当するあなたが今一度、表現のひとつひとつを見直すことで、トラブルを未然に防ぎ、信頼されるブランドづくりを加速させていきましょう。

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