薬機法と健康食品とは?表現範囲やNG表現・言い換え例について解説
健康食品は「薬機法上の一般食品」として扱われる理由
世の中には「健康食品」と呼ばれる商品が無数に存在していますが、実はこの言葉自体には法律上の明確な定義はありません。多くの人が“体に良い何か”というイメージで使っている「健康食品」という言葉ですが、薬機法の世界ではあくまでも「一般食品」として扱われます。つまり、薬のように効能効果をうたうことはできず、「食品としての位置づけ」を超えるような表現をしてしまうと、たちまち法律違反に問われることになるのです。
サプリメントも一般食品?その実態とは
「サプリメント=特別な健康効果がある」と思われがちですが、サプリメントも同様に法律上は一般食品です。たとえカプセルや錠剤など、見た目が医薬品そっくりでも、それを飲んで病気が治る・改善するかのような表現は薬機法の規制対象となります。販売側がどれだけ効果を信じていたとしても、それを広告や商品ページに書いてしまうことは、非常にリスクの高い行為になります。
健康食品に関わる主な法律とは
健康食品を取り扱う際には、薬機法だけでなく、景品表示法や食品表示法、さらには健康増進法や特定商取引法など、複数の法律に注意しなければなりません。特に広告表現においては、消費者が誤認しないように極めて慎重な言葉選びが求められます。たとえば「○○に効く」といった断定表現は薬機法、「他社より優れている」といった比較表現は景品表示法に抵触する恐れがあります。法令の知識がなければ、意図せず違法広告になってしまう可能性もあるため、事業者は常に最新のガイドラインを意識する必要があります。
こうなると違反!薬機法に抵触するケースとは
健康食品が薬機法に違反してしまうパターンはいくつかあります。その代表例が、医薬品にしか使えない成分を含む場合です。たとえば厚生労働省が定める医薬品成分を、食品に添加していたり、海外製品をそのまま日本に持ち込んで販売していたりする場合、知らずに違反しているケースが後を絶ちません。
また、広告で「治る」「改善する」といった医薬品的な効果効能をうたってしまうこともアウトです。例え実際に利用者の体調が改善されたというレビューがあったとしても、それをそのまま掲載すると違反になる恐れがあります。さらに、アンプル状や注射器風のパッケージ、あるいは用法用量が医薬品と同じように書かれている製品も、薬機法の観点から問題とされます。
【目的別】健康食品の表現範囲はどこまで許される?
健康食品を販売する際には、目的によって許容される表現の範囲が異なります。たとえば、ダイエット系の商品では「脂肪を燃やす」「痩せる」といった断定的な表現はNGです。その代わりに「理想的なカラダづくりをサポート」や「軽やかな毎日を応援」といった、期待感を含む間接的な表現にとどめる必要があります。
妊活系の健康食品においても、「妊娠しやすくなる」といった表現は当然ながら違反です。代替表現としては「妊活中に必要な栄養素をサポート」「体調管理に配慮した成分を配合」などが一般的です。
美容系の商品に関しては、「シワが消える」「シミが取れる」といった表現ではなく、「ハリのある生活へ」「内側からのうるおいケア」など、あくまで美しさを“期待”する方向での表現が求められます。
「明らか食品」とは何か?誤認を避けるための考え方
薬機法には「明らか食品」という考え方が存在します。これは、誰が見ても「これは食品だ」と理解できる形状や内容のものを指します。例えば、おにぎり、パン、味噌汁などがこれに該当します。明らか食品であれば、医薬品と誤認されることがないため、基本的には薬機法の規制対象外になります。逆に言えば、見た目が医薬品に類似している場合は、どれだけ内容が食品であっても誤解を生む可能性があるため注意が必要です。
特保や機能性表示食品との違いは?
健康食品の中でも、「特定保健用食品(特保)」や「機能性表示食品」、「栄養機能食品」は、国の制度に基づいて機能性を表記できる例外的な存在です。特保は、国の審査を通過し、表示内容が正式に許可された製品だけが名乗れる称号です。そのため「血圧が高めの方に」などの表現が可能になります。
機能性表示食品は、企業が独自に科学的根拠を用意し、消費者庁に届け出を行えば表示が可能になります。国の許可がなくてもよいという点で参入しやすいですが、科学的根拠が不十分であれば後々問題になるケースもあります。
一方で、栄養機能食品は、あらかじめ決められた栄養素を一定の量で含んでいれば表示が認められる制度です。たとえば「カルシウムは骨や歯の形成に必要な栄養素です」といった表示が代表的です。
まとめ|正しい知識で安全な訴求を
健康食品を取り扱う際には、薬機法をはじめとする複数の法律に対する深い理解が不可欠です。「効果があるから書いていい」という素人判断では、大きなリスクを招いてしまいます。大切なのは、消費者が誤認しないように、法律の範囲内で“期待感”を持たせる表現を設計すること。そして、根拠がある場合は制度を活用し、正しい手続きを踏んで堂々と訴求できるようにすることです。
あなたの商品がどれだけ良くても、法律を守らなければ長く売り続けることはできません。健全なビジネスのためにも、薬機法への理解と慎重な表現づくりを心がけていきましょう。