薬機法違反による罰則|行政処分や広告の際に知っておくべきことを解説
薬機法とは何か?まずは基本を理解しよう
薬機法(旧:薬事法)は、私たちの健康や命に関わる医薬品・医療機器・化粧品・再生医療等製品などの品質と安全性を確保するための法律です。2014年の法改正によって「薬事法」から「薬機法」へと生まれ変わり、現代のテクノロジーや情報流通に合わせた厳格な運用が進められています。
ネット通販の拡大やSNSの普及により、一般消費者が医薬品やサプリメント、化粧品などの情報を手に入れる場面が圧倒的に増えました。その一方で、不適切な表現によって誤解を招く広告が増加しており、消費者保護の観点から薬機法はかつてないほど重要視されるようになっています。
罰則強化の背景にある社会的課題とは?
ここ数年、薬機法の罰則が強化されているのには、明確な理由があります。第一に、インターネット上の情報流通量が爆発的に増加したことによって、誤解を生む広告表現が氾濫するようになった点が挙げられます。消費者は真偽を見抜くことが難しく、体調不良を引き起こすケースや医師の診察を受けるべき人がセルフケアに頼ってしまうリスクが顕在化してきました。
第二に、悪質な販売業者による無承認医薬品の販売や、医薬品的効能をうたう違法広告が後を絶たないことも、行政が対策を強化する要因になっています。実際、令和3年には薬機法に「課徴金制度」が追加され、金銭的にも重いペナルティが科されるようになったことで、法令違反に対する抑止力がさらに高まりました。
広告とはどこまで?薬機法が定める“広告”の範囲
薬機法における「広告」の定義は非常に広範です。単にテレビCMや新聞広告だけではなく、商品ページの説明文やキャッチコピー、バナー広告、SNSでの投稿、インフルエンサーによる紹介動画まで、あらゆる媒体での情報発信が対象になります。
たとえば、インスタグラムの投稿で「このサプリで毎日すっきり!」という一文を添えるだけでも、薬機法上は“効能効果の表現”と見なされる可能性があります。これはたとえ商品の販売を直接目的としない“レビュー”のような内容であっても、ユーザーを購入へと誘導する意図がある場合には広告とみなされます。広告である以上、薬機法の厳格なルールが適用され、違反すれば罰則を受ける対象となってしまうのです。
違反したらどうなる?薬機法による罰則の内容
薬機法に違反すると、想像以上に重い罰則が待っています。たとえば、虚偽の効果効能をうたって医薬品を販売した場合、個人であっても「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」、またはその両方が科される可能性があります。さらに法人であれば社会的信用の失墜や、営業停止などの深刻なダメージに直結します。
加えて、厚生労働省や都道府県によって「行政処分」が下されることもあります。これは、違反商品の販売停止命令や、広告文の訂正命令、最悪の場合は業務停止・許可取消にまで発展することもあります。行政処分は多くの場合、自治体のウェブサイトや業界メディアで公表されるため、ブランドの信頼失墜は避けられません。
さらに近年導入された「課徴金制度」では、不正な広告によって得た売上の4.5%を上限とする課徴金が課されます。これは“違反によって得た利益は、すべて返してもらう”という趣旨の制度であり、金額としてもインパクトの大きいペナルティです。
企業として守るべきこと、今すぐ始めるべき対策
薬機法違反を防ぐためには、ガイドラインの理解が不可欠です。厚労省が出している「医薬品等適正広告基準」や「医療広告ガイドライン」は、表現の可否を判断する上での拠り所になります。特にWebやSNS運用を担う部署の担当者には、これらを実務レベルで理解しておくことが強く求められます。
また、社内で使用する広告表現を一貫して管理するためには、独自のレギュレーションルールやチェック体制を整備することが重要です。表現監修にあたっては、薬剤師や医師など薬機法に詳しい監修者へ原稿をチェックしてもらう体制を作ることで、広告文の信頼性が格段に上がります。
さらに、医療や薬事の専門性が高い分野に踏み込む場合には、薬機法対応に実績のある弁護士との顧問契約も視野に入れるべきです。特に法律の解釈が微妙なケースや、行政処分リスクが高い商品カテゴリを取り扱う場合には、事前のリーガルチェックが生命線となります。
まとめ|薬機法は「知らなかった」では済まされない
広告や商品説明は、企業の顔であり、信頼を築く第一歩です。だからこそ、薬機法を軽視した表現によって罰則を受けるという事態は、企業にとって致命的な結果を招きかねません。違反による金銭的損失や信用の失墜だけでなく、ブランドや社内チームの士気にも大きな影響を与えるからです。
「薬機法は難しいから」「うちは小規模だから大丈夫」といった油断は禁物です。情報発信が容易になった時代だからこそ、一つ一つの表現に責任を持ち、コンプライアンスを土台にしたマーケティングが強く求められています。正しい知識と体制づくりで、健全な事業運営と信頼のある広告表現を目指していきましょう。